10個のストーリーを通してマーケティングの基礎が学べる本。 主人公の宮前久美に自分を重ねて読んでしまい、 所々で、昔お世話になった師匠や先輩、同僚、そしてお客様 を思い出し、感慨にふけってしまいました。 1.我々の事業の定義は何か? 自分たちの事業の定義を鉄道事業と定義したために、他の輸送手段に目がいかなかったという有名な話し。 自分たちを「居酒屋」と定義するなら、そこら辺の居酒屋に行ってもらった方がいい。 自分たちは、空間も含めてお客様に提供しているのだ。 今日一日、大変だった、辛かった、いろいろあった。だけど、一日の締めくくりに 大切な仲間と、好きな人と、美味しい食事があって飲み物があって、いい時間を過ごせたなら、 総じていい一日だったって思えるんじゃない?そんな場を提供するのが私たちの仕事でしょ。 そう思えたら、私たちのサービスとは何?って事も変わってくるよねと言ってた店長。 2.カスタマー・マイオピアからの脱却 店長を卒業し、アルバイト人員不足解消の企画案を引っさげて本部へ乗り込んだ私。 宮前久美のように、本部で上司・先輩にコテンパンにヤラれました。 営業部への企画プレゼン。論理的には筋も通っていたし、自分ではかなり満足したプレゼン。 しかし、その後の先輩からのフィードバック。 「小泉、営業部の人達の表情や心の置きどころ見えてた?」 言っていることは正しいんだけどさ、そうじゃないんだよな。 なんだよ!助けて欲し言っていってるのそっちだろ! そんな事言うなら、助けてやらねぇ!と怒る私。 要望には応えている。しかし、期待を越えられてい無いことに気づくには少し時間がかかりました。 本書にもこのように書かれています。 「顧客が言うことは何でも引き受ける」ということではなく、「顧客の課題に対して、自社ならではの価値を徹底的に考え、提供をする」この思想への転換をするには、脳みそに本当に汗しなければなりませんね。 3.値決め 自社内なのだから原価すれすれだっていいじゃない。安くして普及させようと思って値決めをしたら、 上司から一喝。 いくら自社内とはいえ、人が動いているのだ。そこにはコストが発生しているのだ。 こちらが利益が出て、お客様(営業部)が満足する最高の値段を決める。それも仕事だ。 この言葉を思い返しました。 4.企画は一貫性を持つ。 先輩からの言葉。企画は続いていくから意味がある。ポットでのアイデアを一回形にしたところで、 永続性が無ければそんなの企画ではない。その企画も他の企画との関連性や全体として何を目指しているのか との整合性が無ければむしろやらなくていい。 5.バリュープロポジション なぜ、自社で行い、外注しないのか?派遣会社と比べて価格が安いからだけでは何の競争力も持たない。 「人材不足の解消を派遣で賄う」ではなく、 「人材採用の新しいチャネル」として派遣を捉える。ということで自分たちしか出来ないことを定義した。 6.普及のきっかけ 最初の一年間は、この新規事業のコンセプトの理解や活用方法をなかなか浸透できずうまくいかなかった。 しかし、営業部部長クラスの一人がこの事業に共感してくれて、一緒に店長への説明をしてくれるようになった。 その事がきっかけとなり、キャズムを超えて一気に普及し、そして最終的にはそのコンセプトを営業部自身で 理解して採用に活かすという方向になり、私はこの企画を営業部へ引き継ぎ自分の事業を終了させた。 宮前久美は、まさに私だったなぁと思いながら、 自分を育ててくれた、師匠、先輩、同僚、お客様の顔やその時頂いた言葉を思い出して、 なんだか泣けてきてしまった。 本書のテーマは、 ・市場志向の事業定義 ・顧客絶対主義の落とし穴 ・顧客満足のメカニズム ・マーケットチャレンジャーの戦略 ・価格設定におけるコストの評価 ・コストリーダーシップ ・バリュープロポジションの定義 ・ブルーオーシャン戦略 ・競争優位に立つためのポジショニング ・流通チャネルの構造と、チャネル設計に関する意思決定 ・Win-Win ・値引きの怖さ ・エブリデーロープライス戦略 ・コミュニケーションの戦略的一貫性 ・イノベーター理論とキャズム理論 というマーケティングにおける基礎理論を把握するための入門的な要素を ストーリー仕立てで紹介してくれているが、まさに現場の仕事の中にこれらの理論が埋まっていて、 目の前の仕事と悪戦苦闘する中でこれらの理論を腹落ちさせることができる事を再認識しました。 その当時、これらの理論の2割も私は知らなかったのだから。