日々是成長

~Now And Here~

矛盾を受け入れる力

日常生活の中には、矛盾することがたくさんあります。 ことわざ一つとってもそうですね。 『善は急げ』と『急がば回れ』 『三度目の正直』と『二度あることは三度ある』 いったい、『どちらを』信じればいいのか?と、迷いますが、 その時、その瞬間は、その事が真実であり、 その限りに置いては、どちらも正しい。 仕事においても、矛盾することは多々あります。 『スピードと丁寧さ』 『論理的思考能力と感覚的直観力』 『短期成果と長期展望』 『時流と原理原則』 私は、外食店長を務めていましたので、 スピード提供と盛り付けの丁寧さには悩まされました。 料理が遅いとお客様からお叱りを受け、 盛り付けが悪いと、写真と違うとお叱りを受ける。 どちらか一方ではなく、どちらも成り立たさなければならない。 どちらか一方に振れてはならない。 完璧なロジックを組み上げたプレゼンも、聴衆の心に響かない。 一方、直観だけでは外れたときの被害は大きい。 短期の果実をとれば、市場から見放され、 長期的な夢ばかり追い求めても、足場が揺らげば絵に描いた餅。 トレンドに乗っかっても、ブームが過ぎれば廃れ、 原理原則に固執すると、チャンスを逸する。 仕事において大切な事は、これらの矛盾をどう成り立たせるかであり、 もっと言えば、これらのバランスするポイントを見つけて手を打たねばならない。 しかし、ひとつだけ厄介なことがある。 このバランスポイントは、『常に動き続ける』 時代の変化、環境の変化、そして、何より人間関係。 昨日の決定は、今日通用しない。そのスピードで意思決定を進めねばならない。 つまり、矛盾する物事のバランスポイントを常に見つけて、 手を打ち『続ける』必要がある。 そうか、世の中は矛盾で溢れているのだな。 そのポイントを見つけて手を打ち続けていくのだな。 では、その矛盾に対してどのような姿勢で処する必要があるのか? 受け入れる。受け止める。 この姿勢が必要と思っています。 受け入れる、受け止めるとはどのようなことなのだろうか? 私は、この二つが必要だと思っています。 無境界と共感 無境界とは、私と他人を分けないこと。 矛盾を解消しようと思ってはいけない。 解消とは、消し去ることであり、矛盾のある状態とない状態とに 切り分けて境界線を引いている。 しかし、そのような状態は作ることはできない。 解消ではなく、和解する。 矛盾のある状態を相互浸透させる。その心持ちが必要。 例えば、闘病という言葉。病と自分を切り離す。 解消しようとすると、病は逆に暴れだす。 闘病ではなく、応病。 病の意味を感じ取り、病と共に歩むことを決めたとき、 身体は全体性を取り戻す方向へ向かい出す。 無境界であろうと定めるとき、 受け入れる、受け止める事ができるようになる。 共感とは何か。 その人の真実を見つめる力。 真実と事実は違う。 例えば、部下が無断欠勤をする。 事実としては、今そこに部下はいない。 それを頭ごなしに叱る。 果たしてそれは正しいことか? 彼の中の真実を見つめたとき、 もしかしたら、夜中まで作業をしていたかもしれない。 もしかしたら、実家を思い眠れなかったのかもしれない。 もしかしたら、睡眠障害なのかもしれない。 自分が、彼と同じ立場であったら、 自分もまた同じ状況になっていたのではないか? そう思えたとき、一緒に根本原因を解決しようとの方向へ進む。 自分と違う価値観に対しても受入れ、受け止めることができる。 責任を負う覚悟が備わる。 受け入れる、受け止めるということができないときは どういう時か。 恐怖心に煽られているとき。 恐怖心が、自分の力を限定してしまう。 恐怖は決して、自分の外にあるのではなく、 いつでも、自分の中にある。 アスファルトの上に一メートル幅の線を引く。 その上を全速力で走ることは誰にでもできる。 しかし、断崖絶壁にある一メートル幅の橋を 全速力で走れるかといえば、恐怖で足がすくむ。 恐怖心が自分の力を限定する。 恐怖心も解消ではなく、和解し、 受け入れる、受け止めるという覚悟が備わったとき、 矛盾というものを全体的に見つめることが出来る。 そして、必ずバランスポイントが見え、今、ここですべき判断が定まる。 最後に。 完璧な仕組みは作ることができない。 私も20代の頃は、完璧な仕組みを作ることに力を注いだ。 完璧な仕組みは、停滞を意味し、進化することが無くなる。 そして、人の思考を停止させてしまう。 これだけは外せないというルールを前提とした大枠の仕組みと その仕組を運営する人の機微によって、バランスを取る。 完璧なマニュアルは作れないし、 あらゆる事を想定した対応策は練ることができない。 だからこそ、日々改善していける。 だからこそ、イノベーションが起こる。 最も生命的な活動が起こる場所は、 カオスの縁。 オーダー(秩序)とカオス(混沌)という矛盾の バランスポイントで、生命活動は活発化する。 矛盾を受け入れる力とは、 生命活動を活発化する力に通じていく。