日々是成長

~Now And Here~

A部長との思い出その3 『お店の全席に座ったことがあるか?お客様思いの店とは』

月に一度、お店の店舗状況を上司が診断する日がある。 お店の運営状態はどうか、書類は適正に管理されているかをかなり細かい項目数でチェックを受ける。

その日は店長としても緊張の日だ。 通常は、エリアマネージャーがその診断を担当するが、 時々部長が同行する。

その日は部長も同行していた。そして、診断を受けた後A部長にこう聞かれた。

『小泉はどんな店を作りたいんだ?』

私は、ありがちな回答をした。 『お客様思いの店を作りたいです』と。

するとA部長にこう聞かれた。 『小泉は、この店の全席に座ったことがあるか? 一つ一つの席に座って、そこからお客様はどんな目線で店が見えて、 どんなふうに感じて、どのように食事をされるか想像したことがあるか?』

正直、全ての席に座ったことなど無かった。 そんな想像ももちろんしたことはない。

『そんなこともしていないで、お客様思いの店なんて作れないぞ。 例えば、この席からはフロントの書類が目に付く。気持よくないよな。 例えば、この席はエアコンの吹出し口の下だ。寒いと思うお客様いるんじゃないのか。 例えば、この席に座れば、窓枠のホコリが気になる。例えば、・・・。』

立って、営業していると見えない世界がどんどん見える。 確かに、お客様はこんな気持で飲食をするのか。 何ヶ月もこの店にいて、そんなこと考えたことも無かったと反省。

相手の立場になって考える。相手の目線で話すとはよく聞く話だが、 こういうことを言うのだろう。

それから数年後、自分が別の形で店舗診断をする立場になって、 私はその店の店長に聞くようにした。

『店長は、この店の全席に座ったことがありますか?』