日々是成長

~Now And Here~

第九十話 「空(クウ)」とは何か

ひきよせて むすべば柴の 庵にて

とくればもとの 野はらなりけり

「庵」とは、草木を結ぶなどして作った質素な小屋のことで、 僧や世捨て人などが仮住まいとしたものである。

庵は、「建築する」とはいわず、「結ぶ」といった。 そこらへんにある柴をかきよせて結んで作ったから庵になる。

もし、結び目を解いてしまえばそこには何も無い。

この歌が、明快に「空」を説明している。

庵は、あるのか、ないのか。

柴を結べば庵はある。結び目を解けば庵はない。

したがって、庵は、あるともいえるし、ないとも言える。 それと同時に、あるともいえないし、ないとも言えない。

庵の存在、有無は、「結び」にかかっている。 結べば庵はあるし、結ぶまでは無かった。

結びを解けば、庵はなくなる。

これぞ、空である。

空は、確かに無である。 しかし、それと同時に有でもある。