ひきよせて むすべば柴の 庵にて
とくればもとの 野はらなりけり
「庵」とは、草木を結ぶなどして作った質素な小屋のことで、 僧や世捨て人などが仮住まいとしたものである。
庵は、「建築する」とはいわず、「結ぶ」といった。 そこらへんにある柴をかきよせて結んで作ったから庵になる。
もし、結び目を解いてしまえばそこには何も無い。
この歌が、明快に「空」を説明している。
庵は、あるのか、ないのか。
柴を結べば庵はある。結び目を解けば庵はない。
したがって、庵は、あるともいえるし、ないとも言える。 それと同時に、あるともいえないし、ないとも言えない。
庵の存在、有無は、「結び」にかかっている。 結べば庵はあるし、結ぶまでは無かった。
結びを解けば、庵はなくなる。
これぞ、空である。
空は、確かに無である。 しかし、それと同時に有でもある。