|-【108話のメッセージ】, 心に響く寓話

第七十二話 愚公山を移す

北山に住む90歳近い愚公という人は、
北を塞いでいる一万ジンもある二つの山を崩し、
南に通じる平坦な道を切り開こうと考えた。

これを家中の者に相談した所、子や孫は賛成したが、
細君だけは疑いをさしはさんだ。

「年寄りの力で、小さな丘でさえ切り崩す事はできないと思うのに、
太行山と王屋山のように高い山がどうなるものですか。
だいいち、崩した土や石をどこに置くつもりですか」

というわけだ。

「土や石は渤海の浜へでも捨てればよかろう」ということで、
三人の子や孫を引き連れて山に行き、崩した土や石を
箕(み)やもっこで渤海の浜へ運び始めた。

近所の七~八歳の男の子も手伝いに加わった。

何しろ、渤海まで一往復するのに一年がかりという、
気の遠くなるようなありさま。

これを見た知叟(ちそう)という男が笑いながら言った。

「馬鹿さ加減もいい加減にしたらどうだ。
行き先短い体で、山の一角さえ崩しきれまいに。」

すると愚公翁さんは哀れむように答えた。

「あんたみたいな浅い考えの持ち主には、到底分かるまい。
あんたの知恵は、あの小さな子供にも及ばない。
たとえ自分が死んだとて子は残るし、
それが子を生み、孫はまた子を生む。子孫は絶えることはあるまい。

子孫代々山を崩し続ければ、いつかは平らになるはずじゃ。

崩した山が元に戻る事はないからな」

知叟も、これには反論のしようもない。

G142_kirihukashi500

photo by pakutaso.com


Comment





Comment