|-【読書】
相手に手を渡す
羽生さんの「決断力」から少し抜粋。
将棋は、お互いに一手ずつ手を動かしていき、指していく。だから、自分が指した瞬間には自分の力は消えて、他力になってしまう。
そうなったら、自分ではもうどうすることもできない。相手の選択に「自由にしてください」と身をゆだねることになる。
そこで、その他力を逆手に取る。
つまり、できるだけ可能性を広げて、自分にとってマイナスにならないようにうまく相手に手を渡すのだ。
(省略)
手を渡すというのは、自分が思い描いた構想とかプランをそのまま実現させる事ではなく、逆に相手に自由にやってもらい、その力を使って、返し技をかけにいくことだ。
手を渡した瞬間は、「どうぞ、好きに次の手を決めてください」と、あきらめに似た感情である。もちろん、あきらめきってしまってはダメだが、そういうものが非常に大事な要素なのだ。
(以上抜粋)
経済学用語に「疎外」という言葉がありますね。
生産者が、りんごを作ります。一旦、りんごを市場に出すと、自分の意思は入れられず、市場の中で値段が決まってしまう。
自分が自由に変えることができないにもかかわらず、自由に変えられるかのごとくに思って行動することを「疎外」といいます。
この疎外も、疎外される事は分かっていても、自分の意思が全く入らない形で疎外されるのではなく、
最善の手を打って、後は市場に委ねるということが大切なんでしょうね。
人事を尽くして、天命を待つ。
さぁ、神様よ、後は好きにしてくれ。
これは、本当に運頼みか?というと、そうではない。
やれることは、やりきった、どんな自然の流れに任せたっていいほうに転ぶさ。という諦めと期待の入り混じった感情で、天にその先を預けるということなのでしょうね。
仕事にも通じるものがありますね。
自分が魂込めてやった仕事。お客様に渡れば、後はお客様が自分の好きなように使う。
その中で、新しい価値が生まれることがある。
こうなるとき、本当に仕事は自分だけの力じゃないなと思うし、この仕事は、もはや自分のやっている仕事ではないと、ポジティブな意味での疎外を経験しますね。
僕が立ち上げた新規事業も、新しい形を生んで、本部から営業部に渡っていきました。
疎外です。
でも、僕の目的は新規事業ではなく、採用をどうにかしたいという思いであったので、とても嬉しくあります。
さぁ、後は好きにやってくれ。
でも、困ったらフォローはしますから。
そんな心境。
だから、この「相手に手を渡す」という部分が、この本で一番今の心にヒットしたのかもしれません。