|---田坂 広志

「風の便り」第95便 古い「眼鏡」

 地球とは、一つの「巨大な生命体」である。
 その「ガイア仮説」の提唱者として知られる
 ジェームズ・ラブロック博士と、何年か前、
 あるラウンドテーブルで討議をする機会を得ました。
 その討議において、ある著名な科学哲学者が、
 次のような問題提起をしました。
  もし、地球が「生命体」であるならば、
  生命に特有の「自己増殖機能」があるはずです。
  しかし、地球には、そうした機能はないでしょう。
 この批判的な指摘に対して、
 ラブロック博士は、反駁することもなく、
 いつものように、温かく、穏やかな表情で
 そのコメントを受けとめていました。
 しかし、その博士の静かな表情から感じたのは、
 この「ガイア仮説」の理論的根拠の浅さではなく、
 むしろ、この仮説の思想的影響の深さでした。
 なぜなら、この「地球とは一つの生命体である」という仮説が
 これからの我々の世界観に、極めて深い影響を与えるのは、
 それが、これまでの我々の「地球観」を覆すからではないからです。
 それが、これまでの我々の「生命観」を覆すものだからです。
  「生きている」とは、何か。
 自己組織化、複雑系、自己創出性、人工生命、そして、創発。
 そうしたテーマを掲げた最先端の科学研究が進むなかで、
 いま、「生命」ということの定義が、変わろうとしている時代。
 我々は、古い眼鏡を外して、
 世界を見つめなければならないのかもしれません。

【感想】

生命論パラダイムの時代、ガイアの思想を読ませていただいたのは、
今年の3月のことでした。

まさに古い眼鏡をはずさねばならないという衝撃を受けました。

要素還元主義からの脱却。

物事を分けると、大切な何かが失われる。

言葉では言い表せない何かがある。

物事は複雑化すると新しい性質が生まれる。

生命は、カオスの淵から生まれる。

宇宙の歴史から、今自分が生きている意味を考えてみる。

頭に雷が落ちるということはこういうことだなと思いました。

いかに自分が今まで小さな歴史観、世界観の中で
生きていたのだろうということを反省しました。

それから、自己創世するガイア、しなやかな世紀などを読ませていただき、
ガイア思想により興味を持ちました。

この考え方をもっと広めたいと思い、まずは会社の同僚にこの話をしました。

今年の一月、守屋淳さんの『孫子、戦略、クラゼヴィッツ』
という著書を読ませていただきました。

一番印象深かったのは、デジタルとアナログの考え方です。

デジタルとは、論理的、合理的、定量化可能であり、
誰でも真似できる世界であり、極限まで行くと互いの性質が似てきます。

相互浸透をしていきます。

デジタルの世界が極限を迎えると、そこからはアナログの世界での戦いになります。

直観、勘など、言葉では言い表せない部分での戦いになります。

この著書を読み、大学時代に触れた「暗黙知」
を思い出しました。

そうした折、田坂先生の「暗黙知の経営」と出会い、

自分が仕事において行いたい事は、まさに暗黙知の伝道である
と思いました。

古い眼鏡を取る事によって、新しい物事の捉え方をするようになってから、
毎日ワクワクしながら過ごしています。

暗黙知を伝える事は、時間がかかり、なかなか成果の出ない事でもあります。

だからこそ、野心ではなく、志を持って自分の使命を果たそうと心に決めました。


2008-06-01 | Posted in |---田坂 広志No Comments » 
Comment





Comment